【技術動向レポート】製造業AI化の壁は暗黙知にあり ― 国内特許動向から見るロボット・FA産業の技術課題と日本企業の勝機

動作模倣学習、説明可能AI、データ標準化の3領域をMyTokkyo.Aiで分析

リーガルテック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:平井 智之)は、特許調査・発明抽出プラットフォーム「MyTokkyo.Ai」を活用し、ロボット・FA産業におけるバーティカルAI実装の技術課題と、関連する国内特許動向を調査した。

本調査では、製造データの収集・統合、熟練技能のデータ化、AIによる判断の説明可能性・信頼性などを対象に、2021年から2025年までの動向を公開情報と業界知識に基づいて定性分析した。

※MyTokkyo.Aiで作成

その結果、「現場データの不足・不統一」「熟練者の暗黙知のデータ化」「AI判断の説明可能性・信頼性」の3つが、ロボット・FA産業におけるバーティカルAI実装の主要な技術課題として抽出された。

調査結果の要点
  • 工場では設備メーカーごとにデータ形式や通信仕様が異なり、工場全体のデータをAIが利用できる形で統合することが難しい。
  • 溶接、研磨、組立、ロボット教示などでは、熟練者の動作や判断をAIが学習できる形に変換する技術が求められている。
  • 品質保証や安全管理にAIを利用するには、判断結果だけでなく、判断根拠や信頼度を現場で検証できる仕組みが必要となる。
  • 今回の推定分析では、動作模倣学習・技能伝承と説明可能AIに関する国内出願が増加する傾向が示唆された。現場データ統合は、標準化や既存設備との接続を中心に安定した出願が続いている可能性がある。
今回の調査で見えた3つの技術課題
1.現場データの不足・不統一

ロボット・FA分野では、設備メーカーごとに独自のデータ形式や通信仕様が採用されている。古い設備も稼働しているため、工場全体の稼働データ、センサーデータ、品質データを統合し、AIの学習に利用するには大きなコストがかかる。中小製造業では、センサーやデータ基盤の整備が進んでいない場合もある。

関連技術として、エッジコンピューティング、OPC-UAなどの標準プロトコル、マルチベンダー機器のデータ連携が挙げられる。今回の分析では、ファナック株式会社、三菱電機株式会社、オムロン株式会社などが関連企業として整理された。

ファナックはFIELD systemによる工場データの収集・連携、三菱電機はe-F@ctoryによるエッジ処理と既存設備との連携、オムロンはi-Automationによるセンサーデータの統合に取り組んでいる。

2.熟練者の暗黙知のデータ化

製造現場の技能には、手の動き、力加減、作業音、加工状態の見極めなど、言語化しにくい暗黙知が含まれる。熟練者の高齢化や人手不足が進む中、技能をモーションデータやセンサーデータとして収集し、ロボットやAIへ移転する技術の重要性が高まっている。

関連技術として、動作模倣学習、モーションキャプチャ、強化学習、VR・ARを用いた技能伝承が挙げられる。今回の分析では、株式会社安川電機、川崎重工業株式会社、パナソニックなどが関連企業として整理された。

安川電機はロボットの動作教示と模倣学習、川崎重工業はSuccessorによる遠隔操作と自律動作の融合、パナソニックは溶接・組立作業に特化した技能伝承に取り組んでいる。

3.AI判断の説明可能性・信頼性

製造現場でAIが異常や不良を判定する場合、現場担当者は判定理由を確認する必要がある。判断過程が分からないブラックボックス型AIは、品質保証、安全管理、設備保全における検証を難しくし、導入の障壁となる。

関連技術として、注意機構による判断根拠の可視化、ルールベースとAIを組み合わせた手法、不確実性の定量化などが挙げられる。今回の分析では、株式会社日立製作所、富士通株式会社、日本電気株式会社などが関連企業として整理された。
日立製作所は異常検知と判断根拠の可視化、富士通はWide Learningによる少量データでの説明可能性、NECは異種混合学習による予測と説明に取り組んでいる。

直近5年間の出願動向と主要企業の技術比較

※MyTokkyo.Aiで作成

今回の推定分析では、2021年から2025年にかけて、暗黙知のデータ化と説明可能AIに関する国内出願が増加する傾向が示された。現場データ統合は基盤技術として成熟しつつあり、標準化やマルチベンダー連携に関する出願が安定して続いている可能性がある。

現場データ統合では、クラウド連携、エッジ処理、センサー統合など、工場内のデータを収集・連携する技術が中心となっている。暗黙知のデータ化では、ロボット制御と一体化した動作教示や、特定工程に深く特化した技能伝承が見られる。説明可能AIでは、異常検知の根拠提示や少量データでの説明、複数モデルを組み合わせた予測技術が注目される。

今後注目される3つの技術領域
1.中小製造業向けの低コストデータ収集技術

古い設備にも後付けできるセンサー、データ形式の自動変換、クラウドへ接続せず現場で処理できるエッジAIなどである。大規模工場向けのデータ基盤に比べ、導入負担を抑えた中小工場向けの技術には開発・知財化の余地がある可能性がある。

2.特定工程に特化した技能伝承AI

溶接、研磨、塗装、組立などの工程ごとに、熟練者の動作、力、音、画像、作業結果を組み合わせて学習する技術である。日本企業が蓄積してきた現場データと工程ノウハウを、独自の学習データや知財につなげられる可能性がある。

3.品質保証・安全管理に対応した説明可能AI

AIの判定根拠、不確実性、使用したデータの範囲を、現場担当者や品質保証担当者が確認できる形で示す技術である。自動車部品、医療機器、精密機器など、高い品質と安全性が求められる製造分野への展開が期待される。
なお、これらは「特許が存在しない領域」や「完全なホワイトスペース」であることを示すものではない。今回設定した調査範囲に基づき、関連出願が増加している、または相対的に限定されている可能性がある領域として整理したものである。

MyTokkyo.Aiについて

MyTokkyo.Aiは、特許調査、発明内容の整理、関連特許の要約・比較、発明提案書や出願準備資料の作成を支援する、特許調査・発明抽出プラットフォームである。
調査目的や技術内容を自然文で入力することで、AIエージェントが特許データベースを参照し、関連特許の検索、要約、比較、技術資料との対比などを支援する。

主な機能:

  • 自然文による特許調査
  • 関連特許の検索、要約、比較
  • 技術資料と特許公報の対比
  • 発明の課題、解決手段、効果の整理
  • 発明提案書や出願準備資料の作成支援

製品ページ:https://www.tokkyo.ai/pvt/

調査方法と留意事項

調査対象:日本国内の公開特許・登録特許
調査方法:ロボット、FA、工場自動化、製造データ、センサーデータ、技能伝承、動作教示、異常検知などの技術キーワードと、AI、機械学習、エッジコンピューティング、OPC-UA、模倣学習、説明可能AIなどの関連キーワードを組み合わせ、IPC分類(B25J、G05B、G06Nなど)を参照しながら、公開情報と業界知識に基づく定性分析を行った。


※今回のレポートは、特許データファイルに基づく定量分析ではない。本文に記載した出願動向と企業・技術領域の関係は、公開情報と一般的な技術動向に基づく推定を含む。
※個別の特許番号、出願件数、権利状況については、特許データベースでの追加確認が必要である。
※本調査は、関連するすべての特許を網羅するものではない。
※「関連出願が相対的に限定されている」との記載は、関連する特許が存在しないことを意味するものではない。
※本調査は、特許権侵害の有無、特許性、無効性、事業実施の可否などに関する法的判断を行うものではない。
※本調査は、日本国内の公開特許・登録特許を対象としており、海外特許や国際比較は調査対象に含まない。

会社概要
  • 会社名:リーガルテック株式会社
  • 設立:2021年3月
  • 資本金:4 億9,300万円(資本準備金含む)
  • 代表取締役社長:平井 智之
  • 所在地:東京都港区虎ノ門5-13-1 虎ノ門40MTビル4F
  • URL: https://www.legaltech.co.jp/
  • 事業概要:
    ・特許調査・発明抽出プラットフォーム「MyTokkyo.Ai」の提供・開発
    ・知の資産化ナレッジベース「IPGenius」の提供・開発
    ・秘密情報の共有データルーム「リーガルテックVDR」の提供・開発