背景:創薬研究における情報管理の構造的課題
医薬品・創薬企業における研究開発業務は、化合物の探索・最適化から非臨床試験、特許出願、FTO(Freedom to Operate)調査に至るまで、多段階のプロセスにわたる。各フェーズで生成されるデータ量は膨大であり、その管理と活用が実務上の大きな課題となっている。
創薬研究の現場では、化合物ライブラリのデータ、合成スキームを記録した研究ノート、活性評価・選択性評価の実験データ、毒性・薬物動態に関する非臨床試験報告書、特許明細書、先行技術調査報告書などが、部門やプロジェクトごとに分散して管理されている。研究部門、薬理部門、安全性評価部門、知財部門がそれぞれ異なる形式でデータを保有しているため、部門を横断した参照が困難になりやすい状況にある。
特に創薬領域では、化合物の呼称が社内コード名、一般名、IUPAC名、CAS番号など複数の表記で混在しており、キーワード検索だけでは同一化合物に関する情報を網羅的に抽出できないケースがある。標的タンパク質についても、略称、遺伝子名、タンパク質名などが混在するため、過去の検討履歴を正確に参照することが難しくなっている。
また、創薬研究では、開発中止となった候補化合物の情報にも再利用価値がある。中止理由、中止時点での評価データ、代替アプローチの検討記録は、新たな研究テーマの立案や類似化合物の権利評価において有用な情報となる一方、担当者の異動や退職に伴って埋もれてしまうケースも少なくない。
先行技術調査やFTO調査の前処理においても、研究者が使用している化合物名や作用機序の記述をそのまま検索語として用いると、調査の網羅性が損なわれる可能性がある。調査担当者が研究者へのヒアリングを通じて検索語を整理するプロセスは属人的になりやすく、担当者によって情報整理の粒度や品質にばらつきが生じることも課題である。
こうした課題に対応するため、リーガルテック株式会社は、医薬品・創薬企業の研究開発部門および知財部門を対象とした専用ワークフローの提供を開始した。